A・NUMBER 出演者 戸次重幸 益岡 徹 2022年10月 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 名古屋 仙台 札幌 兵庫 地方公演あり A・NUMBER 出演者 戸次重幸 益岡 徹 2022年10月 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 名古屋 仙台 札幌 兵庫 地方公演あり
10/5(水) 稽古場レポート公開!取材·文 上野紀子(演劇ライター)

『A・NUMBER』 稽古場レポート

 二人芝居、だが、登場するのは二人だけではない。英国人劇作家キャリル・チャーチルが2002年に発表した戯曲『A・NUMBER』は、父親と、彼の息子の遺伝子から作られたクローンたちとのスリリングな対話で綴られる、アイデンティティを巡る物語だ。姿、顔、声が全く同じ三人の男を演じる戸次重幸、父親ソルター役の益岡徹、そして演出の上村聡史と、緻密な会話劇を立ち上げるには最上の顔合わせとなった今回の座組、その稽古場を訪れた。

 一週間後に初日が迫ったこの日に行われていたのは、通し稽古である。上村の合図で音響が入り、すぐさま二人の芝居が始まった。目の前にいるのは驚愕しているソルターと、衝撃を受けてうなだれるクローン息子、バーナードの二人。つい数秒前までフラットな状態でいた益岡と戸次の、瞬時に豹変した感情表現に一気に引き込まれていく。必死に、真剣に言葉を放つほど、かすかな滑稽さが浮き上がる益岡ソルターに対し、戸次バーナードの混乱と悲痛の表情は断崖絶壁に立つかのよう。息子の傷の本当の深さを、この父親は見抜けていない、そう感じた瞬間、微小な可笑しさが哀しみにすり替わった。

 二場に入り、再び対峙する父ソルターと息子バーナード。だがこのバーナードは、一場とは別人格の息子だ。眼光、声のトーン…、前とはまったく違う戸次の表現から目が離せない。苛立ちと怒りを込めて過去を振り返る戸次バーナード、そして益岡ソルターの表情には怯えの色も浮かんで……。

 演出席で二人の動きを見つめる上村は、要所要所で拳に力を込めたり、空気を包み込むように手のひらを泳がせたりと、まるで指揮者のようだ。こうして父と息子のいくつかのシークエンスが続き、通し稽古は68分でエンディングを迎えた。二人の対話には短い相槌が数多く挟まれていて、そのテニスのラリーのようなやりとりが、時にコミカルな空気を作り、時にやりきれない痛みを連れて来る。これほどに細かなラリーを体に落とし込むのは至難だろうな…と推察するも、当然妥協は許されない。ノート(チェック)を始めた上村からは「ここの台詞、抜けましたよ」「ここ、違う言葉で表現していたけど?」と、穏やかな口調なれど容赦ない指摘が続いた。上村の台本はすでに書き込みでボロボロ状態、益岡の台本はビッシリと貼られた付箋で膨らんでいる。戸次は指摘を受けるたびに「ああ〜っ!」と自分を責めるような声をあげて、台本に食いつくようにメモを書き込んでいた。上村が二人を挑発するように「この言葉の後、ひと息つきたくなるのはわかります。でもそれはね、誰でも出来ることだから」と言い放ってニヤリ。益岡と戸次から悲鳴混じりの爆笑が起こる。目指す先の、さらに先へ。作品の精度を上げる、その共通目的のための痛快な戦いの場だ。

 唯一無二の自分とは、存在の証明とは、そして人間の幸福とは…。言葉の渦の中から湧き上がるさまざまな問いが、脳内を駆け巡る。この芝居、おそらく始まった途端に二人が生み出す緊迫の空気に引き摺り込まれ、あっという間に70分が過ぎ去ってしまうだろう。ただしその時間はとてつもなく濃密で、あとに残るは可笑しみと哀切の入り混じった複雑な鈍痛。その余韻を長く噛みしめることになりそうだ。

取材・文 上野紀子
撮影 岡 千里

INTRODUCTION

私は誰なのか。
不条理なものと未来的なもの、
普段、親しんでいるものが、突然、砕けちる時、
人は何を思うのか

クローン技術が進み、人間のクローンを作ることも技術的には可能だが、法的にはグレーゾーンにあたる、そんな近未来の話。
舞台は、自分が実はクローンだったと知った息子と、父の対話から始まる。父は、亡くなった実の息子を取り戻したくて医療機関に息子のクローンを
作り出してもらったと言うが、実は医療機関のほうでは依頼者には黙って一人ではなく複数のクローンを作っていたらしい。
父親はなぜ、息子のクローンを作ったのか。自分がクローンだとわかった息子は、この先どうするのか。
他のクローンたちは、どこでどうしているのか。

CAST

演出

上村聡史(かみむら・さとし)

COMMENT

『羊のドリー』が話題になったのは四半世紀ほど前、イギリスを代表する劇作家キャリル・チャーチルの本作も2002年に発表されて以降、
多くの国で上演されてきました。
科学技術の倫理が際立つテーマもさることながら、戸次重幸さん演じる声・顔・姿が全く同じの三人の男と、益岡徹さん演じる真実を握る男との、
クライムサスペンスの様相を帯びながら展開する会話の応酬や、演劇的な仕掛けも、本作の見どころになるでしょう。
そして、今再び上演する面白さは、「何によって、誰によって、何者であるかを定義されるのか」という視点に尽きます。果たして今この時代に、
性や人種、究極的には人間であることを、我々は定義していくことが可能なのか・・・。多様的な広がりを見せる今とこれからにおいて、
“アイデンティティ”を巡る悲喜交々をご堪能いただければと思います。

PROFILE

2001年に文学座附属演劇研究所入所し、18年同劇団を退座。現在はフリーとして活動。09年より文化庁新進芸術家海外留学制度において1年間イギリス・ドイツに留学。15年に『炎 アンサンディ』『ボビー・フィッシャーはパサデナに住んでいる』の演出で第22回読売演劇大賞最優秀演出家賞、同じく同年『アルトナの幽閉者』『信じる機械』他演出で第17回千田是也賞を受賞。21年には第56回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞。今年2月に発表された第29回読売演劇大賞では、『Oslo(オスロ)』『森 フォレ』の演出で自身2度目となる最優秀演出家賞を受賞。近年の主な舞台演出作に、『ガラスの動物園』『斬られの仙太』『ミセス・クライン』『終夜』『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』『オレステイア』『岸 リトラル』『冒した者』など。

出演

  • 戸次重幸

    バーナード/
    マイケル・ブラック

    戸次重幸

    COMMENT

    尊敬している益岡徹さんとの二人芝居というお話を頂き、ぜひやりたいと即答いたしました。演出の上村さんとは初めてお会いするので、期待や不安もありますが、私は褒められて伸びるタイプなので、お手柔らかにお願いしたいです(笑)。二人芝居の登場人物が二人とは限らない、ということは今の段階で言ってもいいと思うのですが、それぞれが全く異なるキャラクターなので、とても面白い作品になると思います。さらに膨大なセリフ量も見どころの一つになりますので、ぜひご期待ください。上演時間は70分ほどなので、気づいたら終わっていた、というようなことになるかもしれません。私の大好きなSFの要素も入っていますし、難しいことを考えずに、お気軽に劇場に来て頂けたら幸いです。

    PROFILE

    演劇ユニット「TEAM NACS」メンバー。
    舞台、映画、ドラマ、バラエティー番組など幅広く活動。
    近年の主な出演作に、ドラマ「監察医 朝顔」(19、20/CX)、「ファイトソング」(22/TBS)、「仮面ライダーリバイス」(21〜/EX)、連続テレビ小説「ちむどんどん」(22/NHK)、舞台「奇人たちの晩餐会」など。
    NHK総合「SONGS」(ナレーション)にレギュラー出演中。

  • 益岡徹

    ソルター

    益岡徹

    COMMENT

    イギリスでの上演時間が約50分で出演者が二人と聞いてコンパクトなイメージを持ちましたが、読んでみると
    なかなか難しい芝居だなというのが第一印象でした。文明の中で進化した生命に関する技術や研究は、人の幸せの
    ために重ねてきたものだと思うんですが、戦争を通して発展したものもあり、時に開けないほうが良かったような
    箱まで開けた部分があります。この作品で描かれる人の命の問題も、「そんなことをしてよかったんだろうか」
    ということを感じる内容になっているのではないかと思います。ただ、父も息子も科学者ではないし、論理的に
    優れているわけでもなく、我々と同じような人物なんです。彼らをどう演じることで作家が作品で伝えたかった
    ことを伝えられるのか、演出の上村さんと考えていきたいと思います。

    PROFILE

    1980年、早稲田大学商学部卒業と同時に、仲代達矢氏主宰の無名塾に入塾。以後、映画・舞台・TVドラマ・ナレーション等の幅広い分野で活躍を続けている。近年の出演作品は、【舞台】ミュージカル「ビリー・エリオット」(スティーヴン・ダルドリー演出)、「奇跡の人」(森新太郎演出)、「オスロ」(上村聡史演出)、「ザ・ドクター」(栗山民也演出)【映画】「シン・ウルトラマン」(樋口真嗣監督)【テレビ】「半沢直樹」(TBS)など他多数

STAFF

  • 美術:乘峯雅寛
  • 照明:沢田祐二
  • 音楽:国広和毅
  • 音響:加藤 温
  • 衣裳:前田文子
  • ヘアメイク:鎌田直樹
  • 演出助手:神野真理亜
  • 舞台監督:後藤恭德
  • 宣伝美術:柳沼博雅
  • 宣伝写真:渞 忠之
  • 宣伝スタイリスト:菊池志真
  • 宣伝ヘアメイク:林 摩規子

SCHEDULE & TICKET

一般発売
2022年8月6日(土)10:00~ ※全会場共通

東京公演

TOKYO

  • 202210.7

    FRI〜

  • 202210.16

    SUN

    ※全16ステージ

※開場は各回開演の45分前

【★】・・・アフタートークショーの実施決定!

日程
10月14日(金)18:00公演終演後
登壇者
戸次重幸 益岡徹

※トークショー実施回のチケットをお持ちの皆様にご参加頂けます。

【★】・・・バックステージツアーの実施決定!抽選で10名様をご招待致します!ご参加希望の方は、下記フォームよりお申込みをお願い致します。

日程
10月9日(日)15:00公演終了後
所要時間
約15分
登壇者
本作品のスタッフ(出演者の登壇はございません。)
募集人数
10名様
対象
「A・NUMBER」10/9(日)15:00公演のチケットをお持ちのお客様
※当日、半券を確認させて頂きます。
応募締め切り
10月2日(日)24時まで
当選発表
10月5日(水)19時までに当選メールをお送り致します。
ご応募はこちらから
チケット
  • 全席指定:¥7,500(税込)
  • U25チケット:¥3,500(税込)

未就学児入場不可

U25チケットをご購入のお客様は、当日劇場にて、座席指定券と引き換えを行います。
年齢が分かる身分証明書をお持ちください。

公演中止の場合を除いて、お客様都合でのキャンセル・返金はお受けできません。

一般販売
主催
サンライズプロモーション東京
お問合わせ
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (平日12:00~15:00)

イベント開催時のチェックリスト(東京)は
こちらから
【2022.10.4 掲載】

チケット情報

名古屋公演

NAGOYA

  • 202210.21

    FRI

    19:00開演(18:15開場)

チケット
  • 全席指定:¥7,500(税込)

未就学児入場不可

一般販売
主催
メ~テレ/サンライズプロモーション東京
お問合わせ
サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (平日12:00~15:00)

イベント開催時のチェックリスト(名古屋)は
こちらから
【2022.8.12 掲載】

チケット情報

仙台公演

SENDAI

  • 202210.23

    SUN

    17:30開演(16:30開場)

チケット
  • 全席指定:¥7,500(税込)
  • U25チケット:¥5,500(税込)

未就学児入場不可

U25チケットをご購入のお客様は、当日劇場にて、座席指定券と引き換えを行います。
年齢が分かる身分証明書をお持ちください。

一般販売
主催
仙台放送/サンライズプロモーション東京/キョードー東北
お問合わせ
キョードー東北 022-217-7788
(平日13:00~16:00/土曜日10:00~12:00)

イベント開催時のチェックリスト(仙台)は
こちらから
【2022.10.4 掲載】

チケット情報

札幌公演

SAPPORO

  • 202210.26

    WED

    13:00/18:30開演(12:15/17:45 開場)

チケット
  • 全席指定:¥8,000(税込)
  • 全席指定 お菓子付きチケット:¥9,000(税込)
  • U25チケット:¥3,500(税込)

未就学児入場不可

U25チケットをご購入のお客様は、当日劇場にて、座席指定券と引き換えを行います。
年齢が分かる身分証明書をお持ちください。

お菓子付きチケットは、チケット1枚とお菓子のセットです。(数量限定、なくなり次第終了)
「お菓子」は、公演当日会場での引き換えとなります。

一般販売
主催
北海道新聞社/道新スポーツ/エフエム北海道/道新文化事業社/サンライズプロモーション東京
協賛
HORI
お問合わせ
道新プレイガイド0570-00-3871(10:00~17:00日曜定休)

イベント開催時のチェックリスト(札幌)は
こちらから
【2022.10.4 掲載】

チケット情報

兵庫公演

HYOGO

  • 202210.29

    SAT

    12:00/15:00開演(11:30/14:30 開場)

チケット
  • A席:¥5,000(税込)
  • B席:¥3,000(税込)

※未就学児入場不可

一般販売
主催
兵庫県/兵庫県立芸術文化センター
お問合わせ
芸術文化センターチケットオフィス
0798-68-0255
(10:00~17:00 月曜休み※祝日の場合翌日)

当センターをご利用のお客様へ
新型コロナウイルス感染拡大予防対策へのご協力のお願い

チケット情報

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